本研究は1989/90年度同一課題名の下に受けた科研費(一般BNO.01460017)の継続研究であり.本年度を以て研究の第二期を終了する。富年度に於ては強粒子の分光学的諸問題.弱相互作用行列要素の問題を調べた。此の研究で最も大量の計算時間を要したのはクォーク場がゲージ場に及ぼす反作用の効果を完全に取り入れた量子色力学でのゲージ状態を十分な数の代表状態を得るべく出来るだけ多く生成する事であり.此の計算は1990年春より始められ.実行速度1-1.5Gflopsに於て約6000時間を要した。此等の研究を通じて見出された新しい結果は以下の通りである。 (1)強粒子分光学に於ける有限格子サイズ効果の検出。強粒子分光学の研究は従来格子が有限である事に拠り生ずる効果は十分小さいものと仮定されて来たが.我々は格子サイズを変化させ強粒子質量の応答を調べる事により.従来無視されて来た此の効果は予想以上に大きく数%の誤差での質量決定では無視出来ない事を示した。特に此の有限サイズ効果は従来予想された様にサイズに対して指数的な減少を示さず幕乗的に減少する事を明かにし.此の効果が強粒子自体が広がりを持っている事に起因するであろう事が突止められた。 (2)弱相互作用行列要素計算の信頼性の検定。実際の高エネルギー実験で測定される弱行列要素を評価する為には格子上で計算された弱行列要素を繰込理論を用いて.連続空間の物理に結び付ける必要があり.此の操作は摂動計算に依らざるを得ず.其の信頼性が度々問題視されて来た。此処では先ず此の基本的な疑念を払うべく.最も簡単な場合であるл中間子崩壊行列要素及び信頼性が最も疑れていた中性K中間子の混合行列要素を例に採り.摂動計算處法の信頼性を実証した。
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