研究概要 |
対称性は保存則と密接な関係をもっており、対称性の観点から物理現象を把握することは重要である。特に、超伝導や超流動のような巨視的なスケールで起こる量子力学的輸送現象は力学系の対称性との関わりが深く、その記述にゲージ理論が有効に適用できる場合も少なくない。この事実を踏まえ、平成4年度には主として量子ホール効果をゲージ理論の見地から研究した。その内容は以下の通りである。 1.磁場中の電子を記述する集団場理論を構築して、整数量子ホール効果をゲージ不変性との関連で考察した結果は既に発表した。ホール伝導度が不純物ポテンシャルの影響を受けない一種の断熱不変量であることを明らかにすることにより,その量子化の精度が著しく高い事実を説明した。さらに、有限の大きさのホール電子系が記述できるようにこの理論の拡張を行ない、ホール電子系の瑞を流れる電流の力学を考察した。局在が原因となって系の瑞を流れるホール電流の描像が得られることを指摘する論文を現在執筆している。 2.整数および分数量子ホール効果との関連から、量子効果としてチャーン・サイモン項が誘導される機構に関心が持たれている。チャーン・サイモン項の誘導は物理的な観点からは外電磁場に対する量子的な真空(デイラックの海)の応答として理解できることを示す論文を現在準備中である。 3.アハロノフ・ボーム効果、アハロノフ・キャッシャー効果が電磁場の角運動量と密接に関係していることを指摘する論文を投稿中である。
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