研究概要 |
主要実験は1.KEKで測定されたpp散乱の分解能Ayのenergy依存性に現われる異常構造の原因解明と,2.ηNNーπNN結合三体系で生成される準束縛状態の理論的予言と実験的確認のための理論計算である。 1.Ay異常構造 Ay dataのenergy依存性に現われる10MeVスケ-ルの異常構造は他の種類の異常構造が現われないdataと矛盾がないか,矛盾がなければどの部分波に原因があるのかの2点についてAy及び他の関連するpp散乱dataを解析した。その結果J^P=3^ー又は5^ーの部分波にBreitーWigner型の異常項が存在すれば矛盾がないことが分った。更に3^ーと5^ーを見分けるには前方角の断面積等の精密測定が必要であることを示した。続いてπd散乱,pp→πd過程の観測量にこの異常項効果がどの様に現われるかを調べた。こゝでは実験誤差が大きく,明確には結論し難いが5^ーの方が3^ーよりも有利であることが示された。 2.ηNNーπNN準束縛状態 πNN系では束縛状態は存在しない。πN相互作用のP波遠心力の斥力が束縛するのを妨げる為である。しかしηNN系ではηN間にS波共鳴が存在し遠心力が、働かないので束縛状態生成の可能性が高い。この直観的予想を正確な三体定式化による計算によって立証した。ηNN系のthreshold近くのenergy領域でこの三体系の反応であるnpーnp,npーηd過程の断面積を計算し,問題の束縛状態が生成されるかどうかを調べた。I=0,J^P=1^ー channelでnpーnpの断面積にはηNNthresholdの下10MeVの位置に巾20MeVの鋭いpeakが現われ準束縛状態の存在が立証された。これはcusp現象でないことも示された。npーηd過程ではこの準束縛状態の存在のsignatureとして,反応断面積はηd thresholdから急激に立上り,続いて急激に減少する。この変化が10MeVスケ-ルで起ることを発見した。以上の特徴を実験的に確認すれば,せまい崩壊巾のmesonーbarycnーbarycn系の準束縛状態の最初の実験的発見がなされることになる。
|