研究概要 |
ハドロン間相互作用とハドロン系の存在形態の解明はハドロン物理の基本的課題である。二核子系にあっては短距離部分に強い斥力があるので、短距離現象として共鳴や束縛状態があると異常で,その解明は新概念に導く可能性がある。その状態の崩壊巾がせまいと特にそうである。次の問題を考える。1.核子核子散乱実験データの解析により異常構造をもたらしている固有状態の量子数を決めること。2.中間子二核子系の理論計算によりそのような状態を予言し、それを発見する実験を堤案する事。 1.入射エネルギー500‐800NeV核子核子散乱データを總合的に解析した結果,KEKで測定された陽子陽子散乱偏極データ(Ay)に現われるエネルギー依在性に関する二つの異常構造の原因として,E_L=610MeVでは,^3F_3,^3H_5の二つの解があり,E_L=680MeVでは,^1G_4,^3P_1、^3F_4、^3H_5の四つの解があることが分った。更に解を絞り込むのに必要で有効なPP‐PP,PP‐πd,πd‐πd各過程の観測量はPP‐PPでσ_T,△σ_L,△σ_T,PP‐πdでθ_c=104°9dσ/dΩ,Ayo,πd‐πdのdσ/dΩ,iT_<11>などであることを示した。 2.三体素Faddeeu計算法によってηNN‐πNN系に対して,二体力を入力して三体方程式を解き,この結果I=O,J^p=1状態でηNNしきい値の下10MeVの位置に巾20MeVの準束縛状態が生成されることを理論的に予言した。これはηN間にS波共鳴の引力が動き,同時にNN間にもS波引力が強く働くことにより生成される。ηNN系への崩壊はエネルギー的に禁止される。πNN系への崩壊をは、S_<11>共鳴を通じて起るが、S_<11>しきい値よりも50MeV下にこの状態があるのでπNN崩壊も抑制される。これらの理由からS_<11>共鳴自体は全巾150MeVあるが、ηNN‐πNN準束縛状態は巾20MeVのせまい巾となる。更にこの状態を発見するためには,np‐np,np‐ηd,γd‐np,γd‐ηd,ηd‐ηd 各過程でどの様な実験的特微を確認すればよいかについて計算結果を示した。
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