研究概要 |
本年度実施計画に述べた通り,HERAにおける反応過程につき次の二点を檢討して具体的成果を収めた. (1)超対称スカラ-トップクォ-ク発見の理論的檢討 1ー1Rパリティ非保存模型:従来の超対称標準模型においてはRパリティ保存は自明とされていた.しかし,HERAエネルギ-領域ではそれは自明ではく,むしろRパリティ保存を破る新しい相互作用を積極的に導入してその当否を可能な実験結果と対比して檢証することは,超対称理論にとって重要な意味を持つ.われわれは,HERA特有の過程,電子とαクォ-クの共鳴状態に注目し,スカラ-トップクォ-ク発生を実驗的に明確に檢出できることを示した.可能なRパリティ非保存相互作用の大きさ,スカラ-トップクォ-クの質量,混合角の大きさ等につき将来有用となる制限を得た. 1ー2ボソン・グルオン融合反応:HERA特有の過程,光子(Z^Oボリン)とグルオンによるスカラ-トップクォ-ク対発生と論じた.その結果,Z^Oボソンはこの反応には殆ど寄与しないことがわかった。スカラ-トップの質量が50GeV以下ならば,断面積は0.1pb程度となる.質量と混合角のパラメ-タ空間を詳しく檢討し,実驗条件を提案した. (2)電子・陽子深非弾性散乱に対する輻射補正 従來DESY及びDUBNAの研究グル-プの計算があるが,すべての測定の基礎となる問題なので,異なる方法で行った計算結果が互いによい精度で一致しなければならない.われわれは上記2グル-プと異なりハドロン側から必要な物理量を構成して,まず電磁輻射補正に関して計算を実行した.O(α)においてx分布,y分母に関し,上記と一致する結果を得た。また,初めて結果が放出光子の切断運動量に依存しないということを具体的計算により示した.
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