研究概要 |
本年度の研究実施計画に従って,次年度の本研究のための予備実験を行った。実験項目とその結果を以下に示す。 (1)リンやボロンおよび酸素濃度の異なる数種類のシリコン・ウェファを入手し,赤外線吸収法とフォト・ルミネッセンス法とを用いて,それらの濃度測定を行った。赤外線吸収法による低濃度の酸素定量では,精度の点で若干問題があったが,本研究で取扱う濃度範囲の測定では支障がないと考えられる。(2)これらの素材を用いて,電極面積が100mm^2で厚さ約100μmの全空乏層型の表面障壁型検出器を50個製作した。各検出器の特性は,十分良いものであり,次年度に行う本研究でも照射された結晶に対して,同様の方法で製作する予定である。(3)これらのシリコン検出器を原子炉を用いて速中性子で照射し,その影響について評価を行った。積分線量として10^<10>〜10^<14>/cm^2の範囲で速中性子照射を行った結果,検出器の漏洩電類は照射線量に比例して増加した。ただし,漏洩電流の増加率と素材不純物濃度との間には,明瞭な相関関係は認められなかった。照射された検出器に対して, ^<252>Cfの核分裂片を入射させ出力パルス波高の低下するのが確認された。このパルス波高の低下率に対しては,素材不純物の効果が見られた。これらの結果から,漏洩電流と電荷の再結合とが別の原因によっていると考えられる。 以上の実験結果をふまえ,次年度においては素材の照射を行い,その一部分をアニ-リングした後に結晶評価を行い,それで検出器を製作しその特性から照射効果が検出器特性に与える機構を解明する。
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