アモルファスシリコンをつくる場合に、多量の水素原子を添加する。その役割を解明するために、モデルではなく現実に近い系で、第一原理に立脚した分子動力力学法によって、アモルフアスシリコンを計算機の中につくり、その中で水素原子を拡散させながら水素不純物と複数のダングリングボンドを含む系での安定な構造配置と電子状態を決定した。その結果、アモルファス化によってできたシリコンのダングリングボンドと添加された水素原子が強く結合しSi-H結合をつくりダングリングボンドによる深い不純物準位を不活性化する。また、アモルファスシリコン中を水素原子が拡散しながら、水素原子が媒介となってシリコンのダングリングボンドとダングリングボンドを連結し、Si-H-Siからなる3中心結合をつくる。Si-H-Siからなる3中心結合はHを中心にして10度くらいはまげることができるので、これによって構造が柔らかくなることが分かった。また、3配位を持つシリコンと5配位を持つ浮遊ボンドを持つシリコンが存在する。これらの計算結果に基づいて、アモルファス中の水素原子の拡散機構と深い不純物準位の水素による不活性化機構が解明された。
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