高濃度金属スピングラスに現れる特徴の起源を明かにするため、金属スピングラスを磁性電子の遍歴性の度合いから分類したときその両極端に位置すると考えられる物質を準備しその物性上の差異を探っている。試料として (1)遍歴性の強い側の物質としてAlをわずかド-プしたYMn_2系及びMnSiーCoSi系。 (2)局在電子系に近い側の物質としてはMn原子サイトを一部非磁性原子で薄めたホイスラ-型合金 を作成して弱磁場磁化測定等によってこれらの系の磁気相図を決定した。上記(2)の試料については決定した磁気相図をもとにして中性子非弾性散乱実験に適した組成の単結晶試料を作成中である。また、(1)、(2)の中間に位置すると考えられるFe_<65>(NiーMn)_<35>合金単結晶試料についての中性子散乱実験を行なった。強磁性相からスピングラス相へのリエントラントスピングラス転移を示す試料で、スピン波スティフネス定数、スピン波強度ともリエントラント転移温度の上下で変化がなく、最低温度(10K)までスピン波励起が存在することが観測された。また、強磁性相出現の臨界濃度付近の試料でも広い温度範囲でスピン波スティフネス定数、スピン波強度とともにほとんど温度変化のない励起の存在が観測された。この結果は今までに報告されてきた他のリエントラントスピングラスにおけるスピン波励起とは異なるものである。上記(2)の試料によるスピン波励起の観測との対比から磁性電子の遍歴性との関連についての知見が得られるものと期待される。
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