本実験では、単磁区で単結晶の固体ヘリウム3試料を超音波トランスジューサーとレシーバーの間に作る必要がある。この電極間を満たす様な大きな質の良い試料を成育することはそれほど容易なことではない。超流動状態のヘリウム3から析出させていくのであるが、数mmにわたり均一性を得る必要があり、現在の所、まだ問題点が残っている。そこで5kG以上の磁場をかけた状態で、cubicな対称性を持つ高磁場秩序相の単結晶を先ず作り、その後磁場を小さくして低磁秩序相(uudd)に転移させる方法も試みる予定である。この他、固体ヘリウム3試料と電極間の音響インピーダンスのミスマッチに関しては、低周波(1MHz付近)では比較的に問題が少ないが、高周波(100MHz以上)の場合、新たな開発を必要とする。そこで以上の問題点の克服する努力とともに、高密度のbcc固体ヘリウム3の磁気相図を調べる試みが行われた。その結果、磁気相図は交換相互作用が約2桁も小さくなることを反映して全体的に縮小するが、低密度の磁気相図とはほぼ同じ様な形状であることが確認された。またhcp相についても、3.2Tのもとで完全核偏極に至る過程での磁気圧力の温度変化曲線から、hcp相での4体交換相互作用のモル体積微分の大きさが初めて実験的に決められ、予想以上に4体交換の効果が大きいことが判った。但し、これから4体交換相互作用の大きさを求めるには、もっとモル体積を変えて精密な測定をする必要があり、今後の課題である。
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