研究概要 |
1.はじめに溶融相とα相のAgIの動的構造因子の計算を行い、固有振動モードを調べた。α相の電荷密度相関関数Scc(κ,ω)において見えていた15ps^<-1>のあたりのLOモードのピークは、溶融相でははっきりと認識できなくなっている。α相では、短波長でSii(κ,ω)にはっきりとLOモードが現れていたのに対して、溶融相ではそれがなだらかになってしまい、モードを明確に識別できない。Iの構造が崩れたことを反映して、Sii(κ,ω)の短波長高振動数LOモードが幅広がりになり、電荷密度相関関数にもLOモードが明確に現れなくなった。 2.次に静的誘電関数の解析性の考察を基盤に、超イオン導電体中の秩序形成過程等を調べた。すなわち、超イオン導電体の静的誘電関数を調べることによって、溶融相においては溶融状態から固化への前駆現象を、また超イオン導電相においては、固体の周期的構造を間接的にとらえることができた。さらにフラクタル描像の観点からイオンの拡散経路を調べると、融点直上ではIの局所的な秩序構造は固相でのそれに同じであり、それを反映してD=2を実現しなかった。これは溶融相のIイオンが固相への相転移、つまり結晶化へ前駆現象を示したものであろう。同じ現象を静的誘電関数とフラクタルの振舞いの中に見いだすことができた。この研究の依拠したところは、静的誘電関数の因果性にあるため、得られた結果は、一成分プラズマ系等でも示されているように、物質に依らない普遍的な性質を引き出している。 3.最後にイオンプラズマ・モデルにより、陽イオンの超イオン導電体で観測されている低励起モードを説明した。このモデルは低励起モードの特徴のほとんど全てを定性的に説明することに成功している。有効電荷を用いれば、低励起モードの振動数の一致はさらに良くなるが、誘電率との関連で今後に検討が残されている。
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