代表的な重い電子系ウラン化合物であるUPt_3とUPd_3における準粒子のフェルミ面を観測するために、ド・ハース・ファン・アルフェン効果の測定とバンド計算が以前外国で行われたが、かなり深刻な理論と実験の不一致が存在しており、その原因を明らかにするために、現在国内では筑波大学の実験グループが、再実験のための準備を整備しつつある。また、我々理論側も、再計算の準備はほぼ終了した。 これらのウラン化合物と同様な重要性をもつ化合物として、UGe_2が注目を集めている。最近国内で育成された、この化合物のサンプルの純度は極めて高いので、ド・ハース・ファン・アルフェン効果の測定においては、主要な周波数ブランチはすべて観測された、と判断される。UGe_2は強磁性体であり、飽和磁気モーメントが小さいことから、5f電子が遍歴しながら磁性を担っていることが期待される。結晶構造は斜方晶系ZrSi_2型であり、空間群はCmcmである。 5f電子に対する、この描像を確かめるために、遍歴的5f電子モデルの立場から、ド・ハース・ファン・アルフェン効果の測定結果が説明されるかでうかを調べる必要がある。現時点では、相対論的効果を考慮に入れた、強磁性バンド構造の計算手法が確立していないので、先ず、常磁性状態のバンド構造を計算し、次に、スピン縮退した各バンドを、観測された自発磁化から予想される一定の交換相互作用エネルギーだけ分裂させ、フェルミ面を導いた。主要な三個のフェルミ面は、b及びc軸方向へゾーンからゾーンへと連結した形状をもつ。スピン磁気モーメントの大きさを十分に説明することはできなかったが、10^7〜10^8Oeの領域の主要なド・ハース・ファン・アルフェン効果の周波数ブランチの大きさ及び角度依存は矛盾なく説明された。
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