いろいろなセリウム化合物における4f電子の電子状態は、フェルミ面に関する理論・実験研究により次第に明らかにされつつある。CeSn_3のような常磁性化合物においては、4f電子は遍歴し、フェルミ面の形成に直接寄与しており、有効質量は別としても、フェルミ面の形状は、相対論的効果を考慮に入れたバンド計算により、Ni金属と同じ程度に良く説明される。また、CeSbのような反強磁性化合物においては、4f電子はCeイオンに局在しており、そのフェルミ面は基本的にはLaSbと同じではあるが、4f電子の影響を強く受けている。本年度においては、遍歴型重い電子系セリウム化合物に属するCeRu_2Si_2のフェルミ面の計算を完成させ、最近行われた実験との比較により、遍歴4f電子の描像の妥当性を確認した。次に、LaRu_2Ge_2のフェルミ面の計算を行い、局在型強磁性セリウム化合物CeRu_2Ge_2において測定されたドハースファンアルフェン効果の実験結果と比較した結果、その実験結果は、LaRu_2Ge_2のフェルミ面をそのまま何の修正を加えることなしに用いてほぼ完全に説明された。この結果はCeSbと対照的であり、同じ局在型でも、CeRu_2Ge_2においては4f電子の影響は無視し得る程弱いことを示唆している。 ウラン化合物に関しては、UGe_2のエネルギーバンド構造を遍歴5f電子モデルに基づいて計算した。この物質は強磁性体であるので、常磁性状態のバンド構造を僅かにスプリットして強磁性状態のバンド構造を想定し、フェルミ面を予測した。このようにして構成されたフェルミ面は、ドハースファンアルフェン効果の主要な周波数ブランチの振舞いを良く説明するが、強磁性状態のバンド構造に対する本格的なセルフコンシステント計算は将来の課題である。
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