超高真空中でビ-ム状のスピン偏極CS原子線源を開発し、表面磁性研究に応用するための第1ステップとして、初年度は超高真空装置の準備と、セル中でのCs原子の光ポンピングスピン偏極実験を行った。 (1)速度選択的ゼ-マンポンピングによる、Cs原子スピン偏極 気体セル中に封じ込めたCs原子を、超微細ポンピングとσ^+円偏光レ-ザ-を用いたゼ-マンポンピングによって、6^2S_<1/2>F=4:m_F=4の状態にスピン偏極させた。同時に分岐円偏光レ-ザ-をプロ-ブ光として用い、周波数掃引して各準位の占有確率の変化を検出することによって、スピン偏極度を決定した。磁気量子数の期待値〈m_F〉は、プロ-ブ光のσ^+σ^-偏光に対する光吸収量T^+、T^-と、非共鳴時の吸収量Tcを用いて、〈m_F〉=1.90(T^+-T^-)/T_Gで与えられる。鋭いスペクトルを得るために弱いレ-ザ-強度での偏極実験を行い、〈m_F〉=1.06、スピン偏極度25%という値が得られた。本評価法によりスピン偏極度のレ-ザ-強度依存性を実験的に解明することが可能となった。 (2)光帰還による半導体レ-ザ-の狭帯域化と制御 ゼ-マンポンピング用の半導体レ-ザ-は、狭い共鳴周波数に安定に制御する必要がある。高分解能分光を実現する方法の一つとして、単一縦モ-ド発振レ-ザ-に外部鏡で光を戻すことにより、自然放出が誘起する共振器のゆらぎを抑制する、光帰還法の開発実験を行った。ピェゾ素子と高電圧駆動回路の組み合わせで、鏡を精密に操作することにより、自然幅40MHzのレ-ザ-光を、3MHzに狭帯域化することに成功した。さらに、(1)で速度選択的に偏極された原子に直線偏光プロ-ブ光を通し、直線偏光板で分光すると、円偏光2色性のために鋭いピ-クを持つ信号が得られることを利用し、この信号をレ-ザ-に帰還することによって、極めて狭帯域に自己安定化したレ-ザ-光源が開発された。
|