次年度(平成4年度)は次の項目を実施した。 1.レーザー共振器の改良 初年度(平成3年度)の実験状況に踏まえて、レーザー共振器の改良を計った。その第一歩として、共振器の内部に誘電体ミラー(反射率100%)以外にビームスピリッタ(反射率90%)を挿入し共振条件の改善につとめた。しかしこの構成では光損失が多いことがわかり、最終的にはビームスピリッタを石英板に交換した。その結果、分布反転の実現を容易にすることができた。 2.レーザー発振の観測 価電子帯と内殼準位間の光遷移に伴うオージェ・フリー発光が確認されているイオン結晶の内、BaF_2を対象にして実験を行った。その結晶では事前の計算によれば、光利得係数は4×10^<-4>cm^<-1>以上と見積られている。ポンピング光源としては、国立共同研究機構分子研究所のシンクロトロン放射(UVSOR)のアンジュレーター光を利用した。発光測定用の分光器としては現有の焦点距離32cmの装置を用いた。そして、上記の改良した光共振器を光学測定用超高真空槽の中に設置した。実験は主として室温で行ない、レーザー発振に伴う光増幅の有無・発光スペクトル幅の狭帯域化・発光寿命の短縮化を測定した。 以上の項目を実施した結果、価電子帯と内殼準位間での分布反転が実現しており、更に、その事に伴って紫外レーザー発振の観測に成功することができた。
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