研究課題/領域番号 |
03640306
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒田 義浩 名古屋大学, 理学部, 教授 (60013504)
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研究分担者 |
大野 義章 名古屋大学, 理学部, 助手 (40221832)
松浦 民房 名古屋大学, 理学部, 助教授 (10022609)
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キーワード | 酸化物高温超伝導 / d-p模型 / I / N-展開理論 / Fermi液体 / Marginal Fermi液体 / 高濃度近藤合金 / 電荷密度ゆらぎ / Neel秩序 |
研究概要 |
d軌道内電子間の反発力が無限大のd-p模型を、軌道縮重度Nが無限大の極限で厳密解を与えるような近似法(I/N展開法)を用いて考察し、次のような知見を得た。 1.コヒーレント温度Toより低温では、キャリアドーピングと共にd軌道とP軌道とがコヒーレントに混合した新しい状態(ingap状態)が励起エネルギー、ギャップ中に出現し、系全体はFermi液体的に振舞う。一方、ingap状態のバンド巾Woよりも高温になると、P-holeは局在したd-スピンにインコヒーレントに散乱され、高濃度近藤合金と同様な振舞いをする。ここでToはWoの1/10くらいである。また、To≦T≦Woの中間温度領域では、系はmarginal Fermi液体的に振舞い、酸化物高温超伝導体の常伝導状態で観測されている異常現象に対応していると考えられる。 2.隣接d-軌道・p-軌道間のクーロン反発力は、局所的電荷密度ゆらぎを増大させる。また、それを媒介とした電子間有効相互作用を考慮するとS波的クーパー対による超伝導が安定化される。これらの結果は、有限サイズ1次元d-p模型に関する数値対角化法を用いた考察によっても確認された。 3.隣接d-軌道間に反強磁性的直接交換相互作用が働くと仮定して、反強磁性的ネール秩序がingap状態に及ぼす効果を考察した。その結果、hole-ドープ量を減らして行くと、常磁性的ingap状態から反強磁性的ingap状態へ移行し、さらにドープ量を減らして殆んどhalf-filled caseになるとingap状態を含む一様な状態自体が熱力学的に不安定になることが判った。そこでは、d-holeが局在化した状態を含む状態が安定化しているものと考えられる。
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