(1)Cr(100)単結晶表面の清浄化を現在も実施中である。表面残留不純物の窒素がまだ除去されていない。近いうちに角度分解光電子分光実験を実施する予定である。 (2)一次元性有機物超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2の価電子帯を角度分解光電子分光により調べた。深いエネルギー領域では分子軌道法の計算結果と一致するデータを得たが、フェルミ端は観測できなかった。一次元金属にはフェルミ端は存在しないという理論があるが、本実験の結果がその予想に合致したものなのか、試料の表面状態によるものなのか、不明である。今後の研究が必要である。 (3)W(110)表面に水素原子が吸着して発生する表面再配列を角度分解光電子分光により調ベた。その際、水素原子吸着によって誘起される表面準位の、非再配列→再配列転移に伴う変化に着目した。この変化をタイトバインディング法の計算結果と比べることにより、吸着水素原子の位置が、非再配列→再配列転移で、よりW表面に接近する方向へ変化することを見いだした。再配列後の吸着位置はWとの混成をより強くしてエネルギー的に安定化されるものと考えられる。 (4)Fe(110)表面へ吸着したCOの電子状態を角度分解光電子分光により調べた。その結果、吸着量によってCO分子軸が表面に対して変化することがわかった。また、CO4σ軌道も、原子番号の小さい遷移金属に化学吸着した場合、下地金属の軌道(主に3d軌道)と大きく混成することがわかった。
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