研究概要 |
静電型イオンエネルギ-分析器を設計・製作し、エネルギ-が10ー30kevのH^+,He^+,N^+等の鏡面反射イオンのエネルギ-損失を測定した。得られたエネルギ-損失から表面近傍を通過するイオンに対する固体内電子の動的応答に起因する表面の阻止能を、表面からの距離の関数として求めた。この解析に際して、低速の鏡面反射イオンのエネルギ-損失は鏡像ポテンシャルに大きく影響されることを示した。一方、MeV程度の高速イオンの鏡面反射時のエネルギ-損失を高分解能で測定するために、磁場型のエネルギ-分析器を設計・製作した。これを用いて表面軸チャネリングイオンのエネルギ-損失を測定したところ、イオン軌道の種類の違いに起因する微細構造を発見した。この微細構造の解析から、表面原子軸からの距離の関数として阻止能を決定することが出来た。 マイクロチャンネルプレ-トを用いたイオンの一次元位置検出器を、エネルギ-分析用電磁石と組み合わせることにより、収率の小さい大角散乱イオンのエネルギ-スペクトルを短時間で測定可能な高分解能エネルギ-分析型を作製した。このエネルギ-分析器を用いて、単結晶の表面で大角入射すれすれ散乱したHeイオン(表面ブロッキングイオン)のエネルギ-ロスの測定により、表面極近傍の阻止能を求めた。 これらの研究と平行して、平行平板静電型電子エネルギ-分析器を作製し、分子イオンや重イオンが単結晶表面で鏡面反射をするときに放出するコンボイ電子の、エネルギ-および放出角度分布を測定した。測定結果は、表面近傍を通過する高速イオンに対する固体内電子の動的応答により生じる表面ウェイクがコンボイ電子に大きな影響を与えることを示しており、コンピュ-タ-シミュレ-ションとの比較によりこれまで理論的にのみ研究されていた表面ウェイクの詳面を実験的に知ることが出来た。
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