研究概要 |
CeNiSnにおけるエネルギ-ギャップの起源を明らかにするために、CeNiSnとその参照物質であるCePtSnの単結晶試料を育成し、種々の測定を行なった。新しく得た知見を以下に列挙する。 1.コヒ-レンス効果 CeNiSnのホ-ル係数は、約9Kでコヒ-レンスによる鋭いピ-クを示す。また、ギャップはNiサイトの僅かなPt部分置換によって消失する。いずれの結果も、ギャップ形成には、近藤格子としてのコヒ-レンスの発達が不可欠である事を意味する。 2.磁気相関の発達 μSR実験から得られたスピン緩和率は、ギャップが十分開いた1K以下で常磁性スピン相関が発達する事を明確にした。 3.弱い磁気秩序 低温比熱およびNMR測定から、CeNiSnは0.13K以下で弱い磁気秩序(〜0.001μ_B)を起こし、フェルミ面に新たなギャップを生じる事が判った。 4.中性子非弾性散乱 50K以下で低エネルギ-(E=2.5meV)の非弾性散乱ピ-クが、|Q^^→_1|=(0,0,1)と|Q^^→_2|=(0,0,1.33)とに観測された。その強度の温度変化は、従来知られているスピンやフォノン励起では到底説明できない。現在も実験を継続中である。 5.CePtSnとの比較 単結晶CePtSnの伝導と磁性は、比較的大きな結晶場(△=500K)中に置かれた3価CeイオンのRKKY相互作用と近藤効果(T_K=10K)との拮抗による結果として説明できる。この事は、CeNiSnのギャップ形成には、強いcーf混成による価数揺動が必要である事を意味する。
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