液体・気体超臨界条件を実現することによって、液体から気体へと密度を約1000分の1まで連続的にかつ大幅に減少させることができる。この方法は、平均原子間距離を10倍まで拡げることを可能にする唯一の方法であり、この過程で物性は大きく変化する。代表的な液体金属である水銀(臨界温度圧力:1478゚C、1673気圧)は、密度が13.55から9gcm^<-3>まで減少したとき、金属から非金属への転移を起こす。この転移に判い、ミクロに見た原子配列がどのように変化するかを調べることは非常に興味深く、また転移の機構を解明する上で不可欠である。本研究の目的な最近我々が世界に先駆けて開発に成功した新しい手法によるエネルギー分散型のX線回折測定を行うことによって、これまで測定が不可能であった流体水銀の金属-非金属転移前後の構造を決定することである。 これまでに、1700゚C2000気圧までの高温高圧下でX線回折測定が可能な超高張力鋼製の内熱型高圧容器と単結晶サファイア製の試料容器を考案・作成し、1530゚C1980気圧までの温度化力範囲(13.55〜6.8gcm^<-3>までの密度範囲)で測定に成功した。その結果、密度が10gcm^<-3>以上の水銀が金属的性質を示す領域では最近接原子間距離r_1が一定で配位数N_1が大きく減少するという不均質な膨張をすることがわかった。また、金属-非金属転移領域に入ると、N_1の減少の仕方が緩慢になり、それとともにr_1増加し始めることがわかった。臨界点を迂回して気体領域に入り、さらに密度が小さくなったときに水銀はどのように膨張してゆくのか、今度はr_1が大きく増加する一様膨張となるかどうかは非常に興味深い。我々はさらに3.5〜1.5gcm^<-3>までの高密度気体領域でのX線回折測定を行った。その結果、干渉関数S(k)の第一ピークの位置が密度の減少とともに大きく低波数側ヘシフトすることがわかった。詳細については現在解析中である。
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