研究概要 |
コンピュ-タ-の発達と共に非平衡開放系の非線形ダイナミックスの様々な性質が明らかにされ,ポアンカレ-以来の運動形態の転移(分岐現象)に対する力学系理論の発展および最近の閉水路系の流体乱流,半導体の非線形素子,非線形化学反応,非線形振動子系等におけるカオスの物理的実験の登場と相まって,非平衡開放系の運動論を力学系の立場からつくる気運が熱してきた。周期運動から非周期運動(カオス)が発生する普遍的シナリオとして,周期倍化のカスケ-ドによるもの,バ-ストが間欠的に現われることによるもの,多重周期運動を表わすト-ラスが崩壊することによるもの,の3つがあり,これらの3つのシナリオによって発生したカオスを,それぞれ,周期性カオス,間欠性カオス,多重周期性カオスと呼ぶ。カオスの際立った性質(挙動と応答)は,(A)時間及び空間のスケ-ルについて,諸種のスケ-リング則を示すことと,(B)order in chaosと言われるように,著しい時間相関・コヒ-レンスを示すことである。例えば,間欠性カオスの時系列は層流的振動と乱流的バ-ストからなり,その層流的振動は,上記(B)のorder in chaosの典型的例を与える。本研究では,これらの性質に着目して,非平衡開放系における諸々の物理量の混合・輸送およびエネルギ-散逸の挙動を統計物理的に解明することを目指して次の物理的体系に現れるカオスについて研究を行った。即ち,1.非線形常微分方程式系で見られるカオス,2.ハミルトン系のカオス,3.2次元周期写像における加速モ-ドによる異常拡散現象,4.周期的に振動する層流による流体の混合・拡散(Lagrangian乱流),5.半導体のS字型電流電圧特性におけるカオス。6.カオスの奇妙なアトラクタ-上の確率測度の特異点のスペクトルのクロスオ-バ-。
|