研究概要 |
強誘電性反強磁性体の構造相転移の機構を光学的測定により明らかにするため,強誘電性物質および磁性物質を15Kより350Kの温度領域にわたって調べた.光学的方法として,蛍光・蛍光寿命・時間分解蛍光スペクトル・円二色性吸収スペクトルの測定を行った. 強誘電性と磁性とが共存している物質の代表的例であるBaMnF_4結晶について,この物質が不整合型構造相転移を起こすとされる250Kでの蛍光寿命・円二色性の異常性を見つけた.蛍光スペクトルおよび蛍光寿命の温度変化から,Mnイオンから不純物イオンへのエネルギー移送が起こっていることが明らかになった.蛍光寿命の温度変化の解析により,発光母体であるMn^<2+>イオンの結晶内での動きおよびエネルギー伝達機構が明らかになり,磁性イオンが構造相転移において果たす役割を知ることができた. イオン結晶でのエネルギー伝達機構を詳しく調べるため,反強磁性体MnF_2,二次元性強磁性体FeCl_2,一次元性反強磁性体[(CH_3)_3NH]MnCl_3・2H_2O,不純物イオンを含むアルカリハライド結晶(KI:Sn,KCl:Sn)などの物質について,ストリークカメラ法による蛍光寿命測定や高速時間分解スペクトル測定を行った.また,FeF_2やNiO磁性体の吸収スペクトル測定から,従来理論的に予言されていたマグノンと励起子との相互作用について,その機構を定量的に明らかにすることができた.現在,整合一不整合型構造相転移を起こすK_2ZnCl_4について光熱励起による比熱測定を行っており,その相転移とBaMnF_4の相転移との比較からBaMnF_4の構造相転移の機構を明らかにしつつある.
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