今日、申請者やGuth等により提唱されたインフレーション宇宙モデルは宇宙創生にかかわる機構として認識されるに至った。また92年アメリカのCOBE(宇宙背景放射観測衛星)が発見した密度ゆらぎのスペクトルはインフレーション理論の予言するものと見事な一致を示した。しかし量子重力効果によって生成される宇宙は一般に非一様・非等方であり、そのような宇宙でインフレーションが実現するかどうか、明らかでない。 昨年度に引続き、まず第1に近年説かれているcosmic no hair conjectureが如何なる条件の下に成立するかをレジェカリクラスという新しい相対論的時空の発展を計算する方法で進めた。。その結果、一様非等方宇宙について この新たに開発された方法によりインフレーションが始まるための初期条件について制限をかすことができた。また指数関数的膨張の場合のみならず、tn(n>1)的インフレーションにおいても同様に示すことができた。しかし一般の非一様宇宙については数値的には無毛仮説が成立する条件を見いだした。 発展方程式の解が束縛条件を一般に満たさないという困難は現在も解決されていない。 第2は真空の相転移に関して、トポロジカルな欠陥が生じる場合の揺らぎの生成の研究である。テクスチャ及びストリング的欠陥が生じる相転移について膨張宇宙で三次元的にシミュレーションを行った。その結果、揺らぎのスペクトルはべき乗的、相似的構造をもつこと、非ガウス的分布を持っていることが示された。 第3に相転移によって生じるワームホール的構造生成の条件を解析し、ドシッタ宇宙だけでなく、フリードマン宇宙など一般的にその生成条件を明らかにすることができた。 なおこの研究は大学院学生、長沢倫康、降旗康彦の協力のもとにおこなった。
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