研究概要 |
京都大学理学部のタンデムヴァンデグラ-フ加速器からの16MeV酸素イオンを用いて、Au薄膜を通過後の酸素イオンのエネルギ-損失の出射角及び荷電状態依存性を測定した。ビ-ムタイムが2日と少なかった事とこの種の実験が初めての試みであったため、タ-ゲットの最適の厚さを探るために種々の厚さのサンプルを同時にマウントした事もあって、今後の測定に対しては多くの示唆に富む結果が得られたが、今年度の結果のみを見た場合には決定的なものが得られたとは言い難い。出射イオンの荷電状態の分離には永久磁石を用い、良い分離を得りことが出来た。検出器には手持ちの位置検出器(27mm)を用い、このエネルギ-における主な荷電状態である5^+,6^+,7^+,8^+を測定することが出来た。その結果、荷電状態分布がイオンの出射角の増加にともなって変化することが分かった。この変化は実験前の予想に反して8^+状態が出射角の増加とともに減少し他の荷電状態が増加するという興味深いものであった。荷電状態分布の出射角依存性については実験例が非常に限られており、この事実を確認することも来年度の研究の重要なテ-マとなる。エネルギ-損失は予想されたように出射角の増加とともに増加することが分かったが、その荷電状態依存性については収量が充分ではない荷電状態もあるので、現時点では確定的なことを結論するに足る精度の結果が得られていない。今年度は計数率を制御するために、入射粒子を散乱体で散乱させてから用いていたので入射イオンの荷電状態を特定することが出来なかったが、来年度はこの点を改善して実験を行いたい。また、位置検出器の長さが充分でないための困難もあったので、この点についても考慮して来年度の実験計画を決定し、統計精度の良い結果を得たい。
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