研究概要 |
京都大学理学部のタンデム型ヴァンデグラーフ加速器からの16.7MeV酸素イオンを用いて、Au薄膜を通過後の酸素イオンのエネルギー損失の出射角及び荷電状態依存性を測定した。ビームタイムは4日と少なかっので、荷電状態4^+の入射酸素イオンに対して約500μg/cm^2の金標的を用いた実験を行った。手持ちの位置検出器では全ての荷電状態を観測することが出来ないので、有効距離47mmの位置検出器を新たに購入した。この検出器により出射イオンの全ての電荷状態を測定することが可能になった。出射イオンの荷電状態分布は出射角に僅かに依存することが判った。このエネルギーにおいては6^+が主要な荷電状態で約56%を占め、次いで5^+,7^+がほぼ20%、4^+,8^+が1.5%から2%を占めている。3^+状態はごく僅かしか観測されなかった。6^+状態の割合は出射角によって変化しなかったが、出射角の増加にともなって4^+,5^+状態の割合は減少し、7^+,8^+状態の割合は増加する傾向がみられた。エネルギー損失の測定では5^+,6^+,7^+状態に対しては十分な収量が得られ、エネルギー損失が出射角の増加にともなって2%程度増加することが確かめられた。しかしながら、4^+,8^+状態に対しては十分な収量が得られなかったので、これらの荷電状態に対しては信頼出来るエネルギー損失の測定が出来たとは言い難い。また、出射角依存性がイオンの荷電状態に依存するかどうかについても決定的なデータは得られていない。今年度の測定で得られた結果については日本物理学会の年会で発表し、今後の研究の進め方なども含めて議論を深めエネルギー損失の出射角依存性や荷電状態依存性の解明に努めたい。
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