研究概要 |
秩序化の理論的研究は、通常、無秩序な系の一様な急冷等によって見られる秩序化が対象とされてきた。又、実験等でも同様な条件で行われてきた。しかし自然界では熱及び物質の流れが秩序化に大きな影響をもつ。そのため通常の秩序化では多くの場合場所によって時間的おくれが生じる。本研究では秩序化の空間伝播の速さと秩序状態の関連をモデルを用いて調べた。用いたモデルは二種類である。一つは二元合金の相分離に用いられるカ-ン・ヒリヤ-ドモデルであり、他の一つは非保存系の気体モデルの一つであるポッツモデルである。次の結果を得た。 二元合金では三つの特徴的な形態が観測された。すなわち秩序相の急速な拡大ではパタ-ンは乱雑であり、パタ-ンの粗大化がゆっくりと進行する。中速の拡大では規則的なラメラ状のパタ-ンが出現した。ゆっくりとした拡大では拡大方向に伸びる棒状のパタ-ンが出現した。このうち乱雑及び棒状のパタ-ンは自然界で観測されている。 非保存系のポッツモデルでも三つの特徴的なパタ-ンが観測された。このモデルはいわゆる結晶成長のモデルに担当する。秩序化の急速な拡大では小さな結晶粒が多く出現し、それが時間と共に粗大化した。秩序相のゆっくりした拡大では,境界条件の違いにより、パタ-ンは成長方向に長い結晶の集合体となるか、又は単結晶となるかのいずれかである。このいずれも自然界で観測されるが、理論的な裏付ははじめてであろう。
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