相分離の外的要因の変化に対する応答を調べるために時間空間的に非一様な外部条件のもとでの相分離の機構を調べた。特に相分離の初期における外的要因の違いは、その後のパターン形成に決定的な影響を及ぼすことが分かった。本研究で行った理論研究によく似た例として、解けた溶媒に接触した単結晶をゆっくり引き上げて巨大な単結晶をつくる場合をあげることが出来る。又、提案する実験として、溶媒に溶かした高分子及び高分子ブレンドを用いた同様な実験をあげることが出来る。いずれも実用的側面からは、効率のよい単結晶生成を予測するものであり、また学術的側面からは非平衡状態における形態転移として未開拓な分野の提供として、大きい意義をもつ。 本研究では固体のみならず液体をも研究対象である。そのため液体のスピノーダル分解についてその特徴的長さの成長則を調べた。相分離のスケール則によって長さのさのスケールL(t)が時間tの関数としてt^aに比例して大きくなる。ここでaは成長(則)指数と呼ばれ物質の詳細にはよらず固体でa=1/3、液体でa=1とされている。一方、液体におけるa=1はt→∞で、流体の時間発展の法則に矛盾することが知られており、最終的にa=2/3になると考えられる。シミュレーションによって成長指数a=2/3を確認した。また重要な点はa=1→2/3のクロスオーバーが成長のslowing‐downを示すことである。例えば、水と蒸気の系でa=1に対して 予想される流速(7000cm/sec)は指数a=2/3で予想されるもの(10cm/sec)に比べて約3桁も大きい(L(t)=1cmのスケールで)。このように成長の著しいslowing‐downは無重力状態における材料合成等においても重要な意義をもつと考える。これらの研究はワークステーションを用いたシミュレーションを主体にしてなされた。
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