研究概要 |
高い衝突エネルギ-で電子のエネルギ-損失スペクトルを得るためにこれまで使用してきた電子エネルギ-・スペクトロメ-タ-の耐圧改善を図るとともに、保安対策を施した。これによって衝突エネルギ-2keV程度でXeの4d励起および電離領域にあたる60〜150eVのエネルギ-損失領域出スペクトルを測定した。その結果、散乱角0°付近では光吸収で得られている、4d→6pや4d→7pの励起とともに4d電離の巨大共鳴に対応した幅広いピ-クを電子衝突で初めて測定することができた。このスペクトルを光りの吸収スペクトルと比べて興味深い点は、4d電離巨大共鳴のピ-クの4d→6p,7pのピ-クに対する相対強度が著しく小さく、巨大共鳴の極大の位置も15eV程度低エネルギ-側にずれていることである。これは電子衝突の場合、散乱角0°であっても衝突による運動量移行が0でないため、エネルギ-損失スペクトルが光りの吸収スペクトルと一致しないことを示している。DozierとGilbonsは電荷密度関数を用いる方法によって、4d巨大共鳴のスペクトル形が運動量移行によって、どの様に変化するかを計算している。この計算結果では巨大共鳴の極大の位置は、運動量移行の増大とともに高エネルギ-側にずれることになっているが、我々の実験結果ではシフトの方向が逆であり、今後の4d電離巨大共鳴の理解を進めるうえで重要な実験事実となる可能性がある。さらに、本研究ではエネルギ-損失スペクトルの散乱角依存性を測定するために散乱角の設定や読取りの精度および角分解能の向上を図り、Heの2 ^1Sおよび2 ^3Sの励起微分断面積の測定を行った。これは、今後Xeの巨大共鳴の散乱角依存を研究する上でも重要な装置の改善であった。
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