本研究では、ヘリウム原子のレ-ザ-冷却からレ-ザ-トラッピングまでを申請書に記載した計画のとおり成功させることが出来た。実験及びその結果の概略は、次の通りである。 ヘリウム原子のレ-ザ-冷却及びトラッピングは、2s^3S_1準安定励起状態から2p^3P_2状態への赤外遷移(λ=1083nm)を用いて行うため、ヘリウム原子は、ノズルから射出させた後、電子衝撃励起によって準安定状態に励起した。次に、原子線に垂直な方向の速度成分を滅じて原子線密度を向上させるため、原子線に垂直な4方向から赤外レ-ザ-光を照射した。原子線方向の速度成分の冷却は、いわゆるゼ-マン同調法(レ-ザ-冷却の進展に従って変化する原子線の共鳴波長のずれをゼ-マンシフトによって補償する方法)を用いて行った。 次に、このようにして減速(冷却)されたヘリウム原子を四重極磁場と赤外レ-ザ-光による冷却効果とを伴用した方法によってトラップした。赤外レ-ザ-光については、4方向からゼロ磁場の地点に向かって入射させる方法を採った。トラッピングを肉眼で観測できるようにするため、赤外レ-ザ-光の他に、2p^3P_2→3d^3D_3に共鳴する可視レ-ザ-光(λ=588nm)を導入した。この光の圧力によってトラッピングを破壊することの無いように、可視レ-ザ-光もまたトラップを構成するように偏光や入射方向を定めたが、このような2重共鳴によるトラップは、これまでにない新しい試みである。 以上のようにしてトラップされたヘリウム原子は、およそ10、000個であったが、直径約1mmの球形の領域に閉じこめられている様子が肉眼で容易に観測された。引き続いて、閉じこめ時間やレ-ザ-波長依存性などに関する測定を行い、この二重共鳴型のトラップの特性を詳しく調べた。
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