研究概要 |
平成3年度に行った,日高・神居古潭変成帯南部域(日高測線)に続き,同北部域を東西に横切る測線(士別測線)およびその東方への延長(留辺蕊測線)において広帯域マグネトテルリック観測を行った. 1.士別測線:日高測線とともに空知・エゾ帯と日高帯を東西に横断する.たゞし日高測線との違いは,千鳥弧の衝突と高温変成作用を受けていないことにある. 測線の西半分では,浅部に低比抵抗(10〜100Ω-m)のエゾ・空知層が分布し,その下位に古い海洋地殻に属すると思われる高比抵抗層(数100Ω-m)が分布している. 又東半分には高比抵抗(数100Ω-m)の日高変成帯が分布し,その西側境界は明瞭である. 又エゾ・空知層を抜いて貫入している蛇紋岩体は数Ω-mと極めて低比抵抗であり,その分布は明確に識別できる. 又岩体は深さ方向には数キロメートルの厚さしか持っていないことも明らかになった. 以上のような比抵抗構造は大略日高測線と共通しているが,両者の大きな違いはエゾ・空知層の厚さが,日高測線では10キロメートルにもおよぶのに対し,士別測線では高々3キロメートルであることである. 日高では千島弧の衝突により,壮大なforedeepが形成されたことの証拠である。 もう1つの違いは,士別測線の地殻深部に,5kmから20km深に,西落ちに,10〜30Ωmの低比抵抗体が分布することである。 この低比抵抗体はクラプレート上面の海洋性堆積物の存在を示唆しているが,現時点では断言するに至っていない. 2.留辺蕊測線:この測線は西から,日高,常呂,根室帯を横切る.地殻の比抵抗構造は,浅部,深部にかゝわらず極めて複雑であるが,クラプレートに起因すると思われる,高比抵抗(1000Ωm以上)基盤が東落ちに分布しており,その上位に前弧海益堆積物や海山付加体(仁頃層)が乗っていると解釈できる構造が求められた.
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