研究概要 |
日本列島の下では,太平洋プレ-トが東から西へ陸側プレ-トの下へ潜り込み,関東以西ではフィリッピン海プレ-トが北西方向の潜り込んでいる.この沈み込み帯はその弾性体としての構造が地球の他の部分に比べて強い不均質性を示すことが注目されており,その構造の解明は地球に対する我々の理解を深めるだけではなく,この地域での地震発生の仕組みを解き明かす上でも重要である. 本研究では,弾性体のランダムな不均質構造のスペクトルに着目し,その中を伝わる地震波形の概形(エンベロ-プ)の考察を行う.地震波は震源ではインパルス的な波であるが,その波形の概形はランダムな不均質構造の中の伝播するとともに崩れていく.これらをコントロ-ルしているのが、減衰と不均質性に起因する散乱である。 初年度は,放物近似の基づいて地震波長よりも長い波長成分の不均質性による多重前方散乱と強い回折を積極的に取り込んだモデルづくりを行った.また3成分波形の概形と震源メカニズムとの関連についても,一次散乱の範囲で数値シミュレ-ションに取り組んだ.その一部を,2つの総合報告にまとめて発表した.数理的なモデルの研究として,等方多重散乱の場合のエネルギ-密度の時空う分布について1次元と2次元の場合の解析解を導出にも成功した.また,関東・東海から東北地方にかけての地域での潜り込む太平洋プレ-トとその上盤側に位置するウェッジマントルの不均質構造のスペクトル的特徴を明らかにすることを目的として,水平動地震計(2Hz)による観測を山形県月山・山形県東根市・宮城県女川町の3ケ所で開始した.
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