研究概要 |
今年度の研究目的は,流紋岩〜石英安山岩質のガラス質火山岩である黒曜石の音速(縦波および横波)を高温高圧下で測定することであった。今年度の研究によって,次のような新たな知見が得られた。 1.パルスエコ-オ-バラップ法を用いて,黒曜石の音速(縦波および横波)を室温で6GPaまで精度よく測定することに成功した。黒曜石の音速はシリカガラスの音速と同様に,圧力増加とともに減少し,極小値をもつことが分った。すなわち縦波速度は,圧力2.8GPaで極小値をもち,その後圧力とともに再び増加する。横波速度は,圧力約3.6GPaで極小値をもつが,その後圧力6.0GPaまでほとんど増加しないことが分った。測定された縦波および横波の速度の圧力変化から,体積弾性率,剛性率,ヤング率の圧力変化が求められた。常圧の体積弾性率Ko=38.54(GPa),dKo/dp=-0.7,剛性率Go=28.50(GPa),dGo/dp=-1.4,ヤング率Eo=68.59GPa,dEo/dp=-1.8と求められた。 2.地球内部における地震波速度の減少等についての議論を行うためには,高温高圧下で黒曜石の音速測定を行うことが必要である。今年度はその準備として,高温高圧下での音速測定のための実験上の困難な問題解決のための研究を行った。その結果,200℃までの温度で実験デ-タが得られるようになった。今後は約500℃までの高温で,圧力4GPaまでの実験が可能なように技術改良を行う予定である。 3.得られた結果を用いて,地球内部の地震波低速度層の成因について考察を行ったが,低速度層の存在する深さと実験結果の圧力とは対応がつくが,ガラス質火山岩がこの深さにどの程度存在するかが,問題になることが分った。
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