研究概要 |
本年度の研究目的は,天然ガラスである流絞岩-石英安山岩質の火山岩である黒曜石の音速(縦波および横波)を高温高圧下で精度よく測定し,得られた結果を用いて地球内部の地震波速度の分布,特に低速度層の成因について議論することであった。高温高圧下での音速測定に関して解決すべき問題が多くあったため,温度は約200℃,圧力は約4GPaの範囲での音速(縦波および横波)のデータが得られた。目的とした500℃での測定データは今のところ得られていない。 1.シリカガラスについて,温度180(±4)℃,圧力3.8GPaまで,縦波および横波を測定した。その結果,常温でのシリカガラスの音速と定性的には同じ挙動を示した。加圧により現れる音速の極小値は,高温(180(±4)℃)ではより高圧側へシフトすることが分った。具体的には,常温では音速の極小値は縦波が2.3(±0.2)GPa,横波が2.6(±0.2)GPaであるが,180(±4)℃では,縦波が2.9(±0.2)GPa,横波が3.3(±0.2)GPaであることが分った。高温では音速の極小値はより高圧側にシフトするといえる。また180(±4)℃での弾性率およびその圧力微分が求まった。すなわち,体積弾性率Ko=37.7(GPa),dKo/dp=-3.21,剛性率Go=30.5(GPa),dGo/dp=-2.71,ヤング率Eo=72.1(GPa),dEo/dp=-6.32. 2.黒曜石の常温での音速測定の結果は,昨年度の実績報告書にてすでに報告したが,シリカガラスの高温高圧下での音速測定の結果から判断して,黒曜石の音速も高温では,その極小値を常温の場合に比べてより高圧側でもつことは確実である。 3.得られた結果を地球内部の低速度層の問題に適用する場合,もし深さ50〜200Km位のところで,シリカガラスまたはこれに似たガラス質の岩石が存在すれば,低速度層の生因の1つとして今回の実験結果と同じ現象が地球内部で起っていると考えられる。
|