研究概要 |
1.火山から放出される揮発成分の時間的変動を明らかにするため、伊豆大島の三原山火口から3km北に位置する大島温泉ホテルの蒸気井において定期的に気体試料を採取した。研究室において、金属性超高真空ラインをもちいて試料中のヘリウムとネオンを精製し、そのヘリウム同位体比とヘリウム/ネオン比を高精度質量分析計により測定した。1986年から継続している定期観測のデ-タと比較すると,1986年の噴火に関係して顕著に増加したヘリウム同位体比は,その後緩やかな長期的低下の傾向にある。この変化は火山噴火が火山体内の地熱流体系にあたえたショックを反映している。地下の地熱系は噴火後数年にわたって、その影響をメモリ- として保存すると考えられる。保存してある試料については今後,化学組成と二酸化炭素の同位体比を測定する予定である。2.島孤とは異なる火山帯において放出される揮発成分の起源を明らかにするため、西アフリカカメル-ン西北部の温泉や鉱泉で採取され,保存してあった気体試料の希ガス同位体組成と化学組成を測定した。気体の主成分は1試料を除くとほとんどが二酸化炭素であり、窒素や酸素やメタンの含有量は小さい。ネオンからキセノンまでの希ガス存在度パタ-ンを見ると,重い希ガスが濃集する傾向にあり,低温で大気の希ガスが水に溶けたものと解釈された。ネオン同位体比は上部マントル起源の組成と明らかに異なった。アルゴン同位体比は、分別した大気アルゴンに多少の放射性アルゴンがつれ加わったものと考えられる。
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