研究概要 |
繰返し応力の荷重方式として当初せん断負荷を計画したが,一様なせん断力を加えるのは容易でないことが判明した。群発地震の多くが地下マグマのintrusionによる引張破壊で起ることを推定し,曲げ負画装置を用いた繰返し引張り応力を加える方式に変更した。 供試岩石には,花崗岩2種類と花崗閃緑岩の3つを選び,30×40×150mmの角柱の試験片とした。曲げ試験は4点曲げ方式として,試験片に適当な荷重レベル(以下,先行荷重という)までの荷重を負荷した後,除荷一再負荷を繰返し,この操作を試験片が破断するまで,先行荷重レベルを少しづつ増して行った。 岩石の引張応力負荷に伴うAEの,1次元AE標定法を用いた測定によるAE特性は以下のように要約できる。(1)いずれの岩石試験片においても,AEの発生が始る応力は破断荷重の20%以下というかなり低い応力レベルであり,また,繰返し負荷に対するAEの発生状況はほぼ同じである。(2)先行荷重が試験片の破断荷重より十分に低いレベルであるときには,カイザ-効果が明瞭に認められる。(3)先行荷重が破断荷重に対してあるレベルに達すると,荷重除荷の過程においてもAEの発生が生じ,この条件下ではカイザ-効果は著しく崩れる。 以上のように,これまでなされていなかった岩石の引張りによる繰返し応力下のAEの活動度の変化について,新しい知見が得られた。特にこの中で,(2),(3)の現象が認められることから,それらの現象のクライテリオンを与えることなど,AEを用いることによって,実験室内において,繰返し応力の変化である潮汐によって地震の発生がトリガ-されるメカニズムを明らかにする重要な手掛りが得られ,次年度の研究に展開できる。なお,1991年12月25日〜27日の伊東沖の小規模群発地震においても潮汐との明瞭な関係が観測された。
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