水温成層期の湖底付近に形成される「湖底高濁度層」の実態と、その維持機構を明らかにするために、琵琶湖において調査を行い、そのデ-タを解析することにより、以下の知見を得た。主な調査内容は、自記流向流速・水質計による連続測定、TCTDによる水温・電導度の濁度の鉛直分布、および採水・採泥である。 1.成層初期(春季)の琵琶湖底層には、岸から沖へ向う弱い流れ(平均3cm/S)が継続し、河川からもたらされる汚濁物質を沖合底層へ輸送する効果をもっている。 2.成層期には琵琶湖全域において湖底高濁度層がみられるが、第1環流(反時計回り)の中心域底層において特に高濁度であるのは、環流に付随する鉛直楯環流による細粒物質の鉛直輸送の結果と考えられる。 3.湖内には、海洋の「マリンスノ-」と同様な、きわめて軽く、もろい物質(レ-クスノ-)が浮遊し、湖底に堆積しにくいことが湖底高濁度の一因である。その主成分は植物プランクトンの遺骸である。 4.成層期の湖底には常に内部波に伴う周期的な流れが存在し、「レ-クスノ-」の堆積を阻害していることが、湖底高濁度層維持の主な原因である。 5.台風通過後には、大量の河川水が水温躍層付近に流入することによって琵琶湖全域での濁度は急増するが、それによる湖底付近の濁度の上昇効果は必ずしも大きくない。
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