二重チェンバ-として用いたり半密閉型にする改良を加えることにより、自然循環型クラウドチェンバ-中に容易に巨大多結晶雪を多種多数成長させる技術を確立し、1年間この種の雪結晶の形態を調べる実験を続けた。一方、北極圏等と同様に、日本国内においても寒冷の地を選べは、水蒸気の供給も豊富であるため、この種の天然雪結晶の採集と観察も可能ではないかとの観点から、大雪山において天然の雪結晶の観測を行った。 巨大多結晶人工雪は最大のもので、数日で10cm以上に成長することが分かり、それらを八つの種類に分けて3次元的な形態の観察を続けた。この種の人工雪結晶は種類が限定され、いずれもある種の双晶であると推定することができ、結晶境界がベルグ効界によって最も速く成長することが外形を決定するものと結論され、同種の結晶が見掛け上の形態の異なる2〜3通りになることがあり、また、過去に天然雪の新種として報告され多結晶と同種だとみなされる結晶がある反面、人工では生じてもまだ天然には見出だされていないものや天然雪としての報告は多くてもこの実験では見られない種類もあった。これらの結果の一部は、今年度秋に札幌で開かれた国際学会“氷の物理と化学国際シンポジウム"において発表し、(論文が掲載されるばかりでなく)プロシ-ディングズの表紙に典型的な巨大多結晶雪の写真が採用されることも決まっている。 2月下旬に実施した大雪山における天然の巨大多結晶雪を日本国内で観測しようする最初の試みは、暖冬続きの影響で現地の観測期間中の平均気温が平年の値を約10度も上回るなど、好条件には恵まれなかった。しかし、低気圧の通過に伴う雪結晶の種類の変化や、多結晶も相当数観測されたので、解析を進め成果を発表し、冬季寒冷地における、教育の為の雪結晶の観測や研究実験を含む研究観測、共同観測のあり方を探りたい考えている。
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