陸棚斜面上部付近で行ったエネルギー逸散率の鉛直分布測定より、海底混合層の中ではエネルギー逸散率が大きくなる傾向にあること、すなわち海底近くで鉛直混合が盛んなことが確かめられた。鉛直拡散係数を見積ると、海底直上でしばしで10cm^2S^<-1>を越える値が得られた。 陸棚斜面の上部付近に係留した流速計のデータより、陸棚斜面近くにおける内部潮汐の鉛直構造について調べた。躍層付近の中層では大潮の時に内部潮汐も大きくなる傾向が認められたが、海底直上部では黒潮の流路の位置によって内部潮汐の大きさや鉛直構造は変化することがわかった。海底直上部では、間欠的に内部潮汐が発達する傾向がみられた。 黒潮底層水のはい上がりを示唆する海底直上部の低温水の先端は、潮時に関わらず同じ様な位置にあり、このはい上がり水塊は潮汐によって上がり下がりしているのではなく、潮汐の影響はむしろ海底混合層の厚さに現れていることがわかった。 陸棚縁辺部の海底直上に6層係留した流速計の記録からは、観測期間は短かかったが、海底混合層より上の層で沖向きの成分をもっているときでも、海底直上では斜面をかけ上がる方向の成分をもつ流れが形成されていることが確かめられた。これは、はい上がりを示唆する形状の冷水が、確かに斜面をかけ上がる流れによって形成されていることの一つの証拠となるものである。 また、鉛直2次元の数値モデルを用いて、鉛直混合によってどのような2次流が生じるかを調べた。その結果、鉛直混合の時間スケールが慣性周期に比べて長い場合、生じた2次流は地衡流調節によってほとんど無視できるほど小さくなるが、混合の時間スケールが短い場合、海底直上で斜面をかけ上がる方向の2次流が残るという結果が得られた。
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