1. 磁気圏境界に於けるケルビン・ヘルムホルツ(KH)不安定の2次元磁気流体シミュレーションを行ない次の事が明らかとなった。 (1)マグネトシース中の音速マッハ数がどんなに大きくても磁気圏境界はKH不安定に対して不安定となる。このことは昼間側の磁気圏境界だけでなく磁気圏尾部の脇腹の磁気圏尾部境界もKH不安定に対して不安定となる。 (2)KH不安定によって磁気圏境界のすぐ内側に速度境界層ができ、この境界層の内側境界に渦が励起される。 (3)KH不安定による磁気圏内への運動量輸送を評価するために境界での接線応力のマグネトシース中の音速マッハ数に対する依存性を明らかにした。音速マッハ数が1から3の範囲で接線応力はマグネトシース中の圧力に比例することがわかった。マグネトシース中の圧力は太陽風の動圧に比例するので、このことは磁気圏境界に於けるKH不安定による接線応力が太陽風の動圧に比例することを意味する。 2. ペダーセン電気伝導度を持つ抵抗性の電離層との結合を考慮に入れた3次元のKH不安定の線形解析を行ない、KH不安定に及ぼす電離層のラインタイング効果を明らかにした。 (1)あらゆる不安定モードに対してラインタイング効果は安定化の影響を与える。 (2)流れ方向の波長が短かくなって電離層が丁度磁力線振動の節になる場合にはペダーセン電気伝導度が無限大になってもKH不安定の線形成長率は有限な値を持つ。つまり電離層が節になるようなモードではラインタイングの効果は重要でない。
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