本年度は、本研究課題に関連して原始太陽系星雲の力学的特性、特に非軸な称摂動に対する線型応答についての研究が完成し、論文にまとめて英国王立天文学会誌に投稿した。すでに掲載決定となり、現在印刷中である。 本研究は、太陽系星雲のように差動回転するガス円盤上に線形摂動として与えられた非軸対称波動の振舞いを定量的に明らかにしたものである。非軸対称波動はガス円盤の差動回転により波面が押し縮められたり或は引き伸ばされたりする。これにより、非軸対称波と差動回転との間でエネルギ-の交換が行われる。このための非軸対称波は伝播とともに振幅の増大あるいは減少といった現象が生じる。これは従来よく研究されて来た軸対称波動には見られない新しい現象である。特に円盤の回転速度と波の位相速度が一致する所(coーrotation points)を通過するときには波の反射が同時におこり、一般に反射波はもとの入射波よりも振幅が増 大している(過剰反射)。本研究では、ガス円盤の自己重力を考慮すると反射波ばかりでなく透過波にも振幅増大の現象(過剰透過)の生じることを明らかにした。そして、このような波の増幅率を、波の波数(回転方向)とガス円盤の自己重力の大きさの関数として定量的に明らかにした。 本年度は、上記研究の他にも本研究課題の最大の目標である原始太陽系星雲の進化過程を解明するための数値シミュレ-ションプログラムの開発を精力的に行った。その結果、散乱過程を考慮した輻射輸送方程式を解く数値プログラムを完成させた。さらに、輻射輸送を考慮してガス円盤の鉛直方向の力学構造を解くための数値プログラムもほぼ完成しつつある。次年度の研究につながる予定である。
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