2ケ年にわたる本研究において、原始太陽系星雲の形成・進化に係わるいくつかの問題を解明したが、それらは次の3つの研究に大別できる:(1)作動回転する自己重力ガス円盤における非軸対称波の過剰反射・過剰透過現象についての研究、(2)太陽系星雲の形成および初期進化の研究、(3)太陽系星雲中のダストの輻射吸収係数についての研究。以下これらの研究による成果の概要を述べる。 研究(1):太陽系星雲の初期進化は乱流粘性によってひきおこされる。その乱入の励起機構の1つと考えられるシア不安の素過程となる非軸対称波の過剰反射・過剰透過現象を定量的に明らかにした。そして流体の自己重力が、反射率・透過率を急激に増大させることなどもわかった。研究(2):分子雲コアの重力収縮による太陽系星雲の形成と乱流粘性による星雲の初期進化過程を数値シミレーションによって研究した。その結果、最近の観測によって知られている原始惑星系円盤内部の温度分布が、ガスの重力落下による表面加熱と星雲内部の乱流粘性による加熱によってほぼ再現されることが明らかになった。また、現在の太陽系の大きさとほぼ等しいところで、星雲に重力不安定が生じるという興味深い結果も得られた。 研究(3):生まれたばかりの若い星、Tタウリ型星の周りのガス円盤中のダストの吸収係数の周波数特性が一般の星間ダストの場合と異なっているという最近の観測事実を、円盤中のダストの付着成長により、単純かつ合理的に解釈できることを示した。またこの解釈から見積られる円盤の質量は、いわゆる標準モデルの太陽系星雲の質量と一致し、さらに観測から得られている円盤の輻射スペクトルにおける波長100ミクロン付近の特徴とも予盾しないことを示した。
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