研究概要 |
1.芳香族置換ポリアセチレンのラジカルアニオンの吸収スペクトルを2ーメチルテトラヒドロフラン(MTHF)溶媒中で測定した.ポリマ-のラジカルアニオンは,77Kまたは4Kの低温で凍らせたポリマ-溶液にガンマ線照射するか,あるいは室温または140Kで電子線パルスを照射することによってつくり出した.この実験によって以下のことが明らかになった. (1)MTHFに溶解したポリ(1ーフェニルー1ープロピン)(PPPr)には,2種類の電子捕捉サイト(サイトI,サイトII)がある. (2)低温で凍らせた状態では,溶媒のイオン化により生成した過剰電子はまずサイトIに捕捉されてラジカルアニオンとなり,390nmと560nmにλ_<max>をもち800nmにョルダ-を有する吸収スペクトルを与える. (3)温度を上げると640nmにλ_<max>を持つサイトIIに移る.このサイトに捕捉された電子はPPPrのモデル化合物であるβーメチルスチレンのラジカルアニオンによく似たスペクトルを与える.このことから,過剰電子は最終的に1モノマ-単位程度の狭いの領域に局在化していることがわかった. (4)サイトIとサイトIIのちがいは,モノマ-の結合モ-ドのちがいによる. (5)ポリ(フェニルエチレン)(PPA)では近赤外領域に2量体の生成を示すバンドが観測され,電子は2個のモノマ-単位に非局在化していることがわかった。 2.PPPrの2量体モデル化合物であるジ-βーメチルスチレンに電子を付加したものとしないものについてMNDOC法による分子軌道法計算を行った.その結果,過剰電子が付加するとしないとにかかわらず,分子の主鎖は90度もねじれていることがわかった。PPPrにおいて電子が狭い範囲に局在化するのは、かさ高いフェニル基とメチル基の反発的相互作用によって主鎖が著しくねじれるためと結論された.
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