研究概要 |
平成3年度の第2次分として,平成5年度まで3年度分の決定を昨年10月にいただいた。今年度は,タ-ボ分子ポンプ,リニアゲ-トバルブの設備備品の他,真空フランジ類を購入し薄膜作製に必要な真空排気系を完成させた。現在の質量分析計を系にとりつけ,石英製ビュ-ポ-トから現有のナノ秒パルスレ-ザ-を試料に照射できる系をつくり,飛行時間解析システムを作製中である。実験結果として,シリコン単結晶上に二酸化ケイ素の薄膜をつくり,ニッケル金属をこの上に蒸着した金属ー酸化物ー半導体系を10^<ー8>torr前半の真空中で作製し,一酸化炭素の吸着を行い,熱脱離,レ-ザ-脱離を行った。その結果,1064nmの光を利用すると二酸化ケイ素による絶縁が破壊され,ニッケルとシリコンとの反応によりシリサイドが生成され,最上層のニッケルによる一酸化炭素の吸着が阻害されることを見い出した。532nm,266nmの波長の光を導入した実験では,絶縁破壊は起こらずニッケルに吸着した一酸化炭素の光脱離も起こらないことが判った。レ-ザ-出力依存性について検討の必要があり更に詳しく研究する予定である。次に,シリコン単結晶上でシリコンの有機化合物の気体を10^<ー7>〜10^<ー5>torrで系に導入し,レ-ザ-光を試料に当てて光分解の実験を行なった。通常は有機シリコン化合物の気相での分解には200nm以下の紫外光の波長が必要になるが,ある種の化合物では532nm,1064nmの波長で分解を起こした。この結果は光により電子と正孔が生成し,シリコン表面上で有機金属試料の分解が起こることを示唆している。一度生成した有機シリコン薄膜上では,光により電子と正孔を生成する能力が無いため光分解による更なる薄膜の波長は起こらない。1064nmの光分解は熱プロセスによる分解と考えられた。
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