研究概要 |
(1)Si(III)上のメタノール,ホルムアルデヒド吸着を超高真空系で行ない表面温度を変化させ,吸着状態をX線,紫外線光電子分光法(XPS,UPS)で調べた。メタノールは低温で分子状吸着し123Kで表面にメトキシ基と水素が生成した。ホルムアルデヒドは室温で解離吸着し,表面温度を上げるとCH_3→CH_2→CHと脱水素が進行することが示唆された。室温に戻すと,表面に残った水素が反応して脱水素反応の逆反応が起こることが考えられた。メトキシ基はUPSの光源で光分解することが示され,固相に薄膜をつくる際のバインダーとしての機能が示された。(2)新しい機能性ポリマーをつくる目的でメタセシス触媒を開発した。均一系のW系触媒を合成し、イオウを含んだオレフィンのメタセシス反応が触媒的に進行することを始めて見出した。クロスメタセシス,開環重合を利用して,新たなイオウ原子を含んだオレフィン,ポリマーの開発を行った。薄膜化して,伝導性ポリマー,光機能性材料としての可能性が示されるが,まだ実用化には量的な問題から致っていない。(3)CdWO_4(010)面にNd:YAGレーザーの266nmを照射するとアブレーションが起こる。真空中に放出される粒子をSi(III)基板上に析出させ,薄膜の分析をX線回折(XRD),電子プローブ微少部分析(EPMA)を利用して行なった。堆せき膜の組成なCd/W比が数%とCd不足で,XRDの結果WO_3(002)面が結晶成長していることがわかった。EPMAの結果から膜中の位置をレーザー照射スポットの垂直方向に対する角度θで表わすと,Cd/W比はθの関数で表わすことができθの増加とともにCd/W比は減少した。アブレーション中に酸素を共存させるとCd/W比は増加するが,Cd/W=1:1の膜を得るには高酸素圧が必要と考えられた。得られた膜はまだ発光に致っていない。Cd/W比の改善,アブレーション粒子の空間分布などの検討が必要と考えられた。
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