研究概要 |
当該補助金で購入の定電圧電源を既存の真空裝置に取付けたのち、熱陰イオンの生成反応機構を解明するために、特殊な複式イオン源を設計試作すると共に、色々なアルカリハライドを試料に用いて、ハロゲン陰イオンの放射量を、中性蒸気の蒸発量と同時に測定した。また、比較検討するために、アルカリ陽イオンについても、イオン化効率などを測定した。その結果、(1)例えば、F^-は約1pA,K^+は100pA程度のイオンビ-ムが容易に取出せること、(2)F^-とK^+のイオン化効率は、それぞれ、10^<-7>と10^<-4>の程度となり、(3)F^-の放射には熱電子の放射を伴なわないこと、(4)陰陽何れのイオン化効率も、試料の熱化学的な性質(例えば解離エネルギ-や電子親和力など)と作動条件(例えば加熱温度や有効試料表面積など)などの合計11個の因子によって支配されること、又、(5)高真空中に酸素ガスを10^<-6>〜10^<-5>程度導入すること、K^+のビ-ムは半減するが、F^-の方は10倍以上に増大すること、しかし一方、(6)窒素を導入した場合には、K^+放射量の無変化に対して、F^-の方は半減するなど、大変与味深いデ-タも得られた。 以上の如く、熱陰イオンの放射は、熱陽イオンの場合と可成り異なっているが、我々の創案した理論式で合理的に説明できることが判った。また、熱電子の放射を伴うことなく、1pA程度の安定な単色光の陰イオンビ-ムが容易に生成できることも実証した。 以上の研究成果については、一部分を国内の学会で公表し、その統報は今春の日本化学会の年会で発表する。また、現在要約検討中の残餘の成果は、今秋の固体表面国際会議(於オランダのハ-グ市)で公表の予定である。
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