研究概要 |
1.合成し,帯融解法で高純度化した2,3-ジクロロ-9,10-アントラキノンをブリッジマン法で分子平面がほゞ平行に配列した単結晶に育成し,その14×8×6mm^3結晶の中心に7.4×10^5Bgの ^<22>NaCl陽電子線源を挾み試料とした。線源から注入された陽電子が結晶中の電子と対消滅する際に放出される511keVγ線のドプラー拡がりを結晶の方位を変えて測定したところ,陽電子寿命スペクトルは310psの1成分のみであり,γ〓aの方がγ〓bあるいはγ〓Cよりドプラー拡がりが狭いことを見出した。これから電子が結晶中で自由に運動する範囲が分子のC_<zv>軸方向で広いことがわかった。2.無機層状物質であるMnPS_3単結晶を気相法で合成し,その層間にテトラチアフルバレン(TTF)あるいはピリジン(Py)を入れて層間化合物を合成した。層間におけるTTFの電子構造を調べたところ,それはTTF^<+1>とTTF^0の間の混合原子価であることがわかった。また,Pyは水素結合をもつPyH^+-Pyなる錯体を形成し,その分子面が層面に垂直に立つような構造をしていることがわかった。3.黒鉛層間化合物であるCsC_8は從来水素を吸蔵しないとされていたが,熱分解反応で作成した原子状水素とは反応して,三元系層間化合物を合成することができ,ステージ2の構造をとっている。水素気体に対する捕捉速度は,RbC_8>KC_8≫CsC_8の順序であり,酸素気体に対してはいずれも10^<-1>S^<-1>程度である。黒鉛-臭素層間化合物にダイヤモンドアンビルを用いて加圧すると,0.3,0.8,1.2GPaで相転移を誘起し,これが層間における臭素子分の結合軸の黒鉛層面に対する傾斜角の変化を伴っていることがわかった。4.第3の炭素化合物として脚光を浴びているC_<60>,C_<70>をアルミナによるカラムクロマトグラフィーで分離し,その結晶中の陽電子消滅寿命を測定したところ,真空昇華法を適用したC_<60>,C_<70>はそれぞれ427,403lsの単一寿命をもつことがわかった。C_<60>I_<0.08>では2成分寿命である。
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