研究概要 |
臭化テトラアルキルアンモニウム(R_4NBr;R=Me,Et,nーPr,nーBu)および臭化アルカリ(Li Br,NaBr,KBr,CsBr)水溶液中の重水分子のD核のスピンー格子緩和時間(T_1)を1mol/kg以下の低濃度領域で,臭化テトラアルキルアンモニウム水容液については5℃から25℃まで,臭化アルカリ水容液については25℃から50℃の範囲の温度解果を測定した。その結果,臭化テトラアルキルアンモニウム水容液の重水分子のD核のR_1/R_1^0(R_1=1/T_1,R_1^0純水)の濃度効果は,各温度領域においてR_1/R_1^0=1+Bm+Cm^2Cm:重量モル濃度,B,C:定数)で記述され,低温(25℃以下ほど,またアルキル鎖長が長くなるほどB,Cの値は大きくなった。このことは,テトラアルキルアンモニウムイオンの周りの水和構造が低温,長いアルキル鎖長ほど発達してイオンの周りの水和殻同士が互いに重なり合うためと考えられる。一方,臭化アルカリ水容液の重水分子のD核のR_1/R_1^0の濃度効果は,各温度領域においてR_1/R_1^0=1+Bmで記述され,高温(25℃以上)になるほど,Li^+,Na^+イオンではBの正の値は大きくなり,K^+,Cs^+イオンではBの負の絶体願は小さくなった。このことは,Li^+,Na^+イオンの周りの正の水和水はバルクの水に比べて温度の影響を受け難く,K^+Cs^+イオンの周りの負の水和水は逆に温度の影響を受け易い事を意味している。高圧下の電解質水容液の水分子のスピンー格子緩和時間測定のための高圧NMRセルについて,各種材料(ジルコニア,ガラス,ポリマ-)に関して耐圧テストを行なった結果,1000気圧までの圧力では,耐熱性のポリマ-がもっとも安定した耐圧性能を有することが明らかとなり,このポリマ-を高圧NMRセルに使用して以年度に水和水の緩和時間の測定を行う予定である。
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