研究概要 |
1.ミセル溶液中で、1,8ービス(ジメチルアミノ)ナフタレン(PS)のプロトン付加体(PSH^+)と水酸化イオンとの反応で起こるプロトン移動反応を速度論的に研究した。アニオン性ミセル中では、主としてミセル相(スタ-ン相)に分配されたPSH^+とバルク水相に在る水酸化イオンが反応し、しかもこの異相間反応の起こる界面ミセル中心から約30Aであると結論した。また、界面における反応速度定数は、バルク水相での値の約1/10であった。一方、カチオン性ミセルでは、反応物はすべてミセル相の最外側であるグイ-チャップマン層にあると考えられ、均一相での反応であると解釈できた。このようにプロトン移動反応がミセル反応場の影響を強く受ける様子を定量的に明らかにした。2.Ni(II)やCo(II)イオンとニトロサリチリ酸との錯形成反応のミセル添加効果では、イオン電場の影響は顕著に観測されたが、定量的な解析には至っていない。3.AUGCAUの塩基配列を有する自己相補的RNAの3′位にダングリング・エンドXn(n=1ー3)を付けたとき、形成される二重らせんは、コアRNAに比べてより安定化するように作用し、その程度はプリン基の方がピリミジン基より大きかった。また、DNAではRNAに比べて、ダングリングの影響がはるかに小さかった。また、nを増すと安定化が促進された。これはダングリング・エンドのスタッキングが安定化の大きな要因であることを示している。4.dA_<10>ーdT_<10>ーdT_n(n=4ー8)系での二重らせんおよび三重らせん形成の条件と熱力学的諸量を求めた。三重らせんは、NaCl溶液では0.1mol/dm^3の濃度でも形成しないが、MgCl_2溶液では0.05mol/dm^3でも形成した。また、三重らせん形成には三番目の鎖長がn≧5であることを要した。三重らせん中のワトソン-クリック塩基対の安定性は三番目の鎖長には依存しなかった。また、三重らせんの形成速度はdT_nの鎖長が短いほど速かった。
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