1.昨年度に製作したレーザー蒸発用真空チェンバーをマイクロ波分光器と結び付ける作業を行なった。当初、マイクロ波分光器としてはミリ波吸収分光器を考えていた。しかし、超音速分子線とレーザー蒸発によって短寿命分子を生成した場合、その分布が空間的に小さな領域に限られることから、光路長が短かくなって十分な感度が得られないことが予想された。そこで、まず、ファブリーペロー共振器を用いるフーリエ変換マイクロ波分光器を組み合わせることにした。この分光器は共振器を用いるので、空間的に小さな部分だけに短寿命分子が生成しても、そのスペクトルを十分検出できる。 2.そこでフーリエ変換マイクロ波分光器を製作して、真空チェンバー内に組み込んだ。分光器の感度は硫化カルボニル(OCS)の同位体種のスペクトルを測定して行なった。その結果、天然に0.05%含まれる O^<13>C^<34>S同位体種のJ=1-0のスペクトル線を1パルスの測定で容易に観測することができた。また、0.002%含まれる^<18>O^<13>CSのスペクトルを1000パルスの積算で観測できた。この感度はレーザー蒸発によって生じる分子を検出するのに十分なものである。 3.パルスノズルの先端に放電を起こすアダプタを取り付け、放電によって生成した短寿命種のスペクトルの測定を行なった。CS_2とアセチレンをArに希釈した試料を用いて、C_3SのスペクトルをよいS/N比で観測できた。 4.エキシマーレーザーによるレーザー蒸発のために、現在、フランジ等の改良・調整を行なっている。この部分が完成すれば、レーザー蒸発を用いた分光が可能になる。今後、この方法を用いて、新しい炭素鎖分子のマイクロ波スペクトルの研究を進める。
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