研究概要 |
現在,書き換え可能な高速大容量のフォトンモ-ド光メモリ-の実現が強く望まれている。現在上市され始めている書き換え可能な光ディスクは,ヒ-トモ-ドであり,速度,密度の点で不十分である。 我々の研究室では,フォトンモ-ドの光メモリ-に将来使い得る有機フォトクロミック化合物であるフルギドの高性能化を目指して研究している。これまで,光反応の高速性,高感度性,フルギドのレ-ザ-光感受性,等を解明,達成でき,最近は新しい非破壊読み出し法を開発した。 本研究では,フルギドに,耐熱性および繰り返し耐久性を付与することを目的とした。そのために,フルギド分子内で不安定である部分の酸無水物基を他の安定な基にかえることを考えた。 インドリルフルギドの酸無水物基をジエステルに変えたもの(インドリルフルゲネ-ト)は,母体のインドリルフルギドと同様のフォトクロミズムを示した。ただし,着色体の吸収極大が短波長化した。また,フルギドと異なり,EZ異性化反応がかなり顕著に起きた。フルギドの系では,置換基を嵩高くすると着色効率が上昇したが,フルゲネ-トではEZ異性化反応が起き易くなった。これは,開環体の分子全体が非平面状態をとれるので,嵩高い置換基による立体反発のために環化できるコンフォメ-ションをとりにくくなったためと考えられる。 フルギドの酸無水物基を開いて,ケトンとエステルにしたもの(フルゲノン)も合成し,フォトクロミズムを調べた。フルゲノンもフルゲネ-トと同様の吸収スペクトルとフォトクロミズムを示したが,フルゲノンの方がフルゲネ-トより環化着色体への変換効率が悪かった。 本年度の研究結果を踏まえ,また当初の研究計画に沿って,来年度は分子設計をさらに精密化して,フルゲネ-トの環化着色の量子収率を向上させ,フルゲネ-トの熱安定性および繰り返し耐久性を調べる。
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