研究概要 |
現在、書き換え可能な高速大容量のフォトンモード光メモリーの実現が強く望まれている。現在上市され始めている書き換え可能な光ディスクはヒートモードであり、速度、密度の点で不十分である。 我々は、フォトンモードの光メモリーに将来使い得る有機フォトクロミック化合物であるフルギドの高性能化を目指して研究している。光反応の高速性、高感度性、レーザー光感受性等の性質については、どのような分子設計が有効であるかを明らかにすることができ、最近は非破壊読み出し法を付与することに成功した。 本研究では、フルギド(1)の熱安定性、繰り返し耐久性を向上させるための方法の開発と、分子設計の方法の確立を目指した。既に昨年度、1の酸無水物基をジェステルに変え、フルゲネート(2)とすることで保存時の加水分解に対する耐久性を向上させることに成功した。しかし2は光定常状態での着色体への変換率が悪いので、本年度はこれを向上すべく、1の酸無水物基をラクトンに変えたフルゲノリド(3)を合成した。3の着色体の吸収極大は1よりは短波長だが2と同程度。着色体への変換率は1と同程度、着色、消色の量子収率(反応効率)は、1のそれぞれ10倍、5倍、とその性能が飛躍的に向上した。現在このものの繰り返し耐久性、熱安定性を調べているが、1より格段によい。 ポリマーフイルム中におけるフルギド自体の繰り返し耐久性を向上させるのに、何らかの添加物が有効ではないかと考え、数種のポリマーフイルム中にフリルフルギドを分散させ、そこに紫外線安定剤として用いられているヒンダードアミン(HA)、ヒンダードフェノール(HP)、および両者を併せ持つもの(HAP)を共存させ、空気中で光反応を行い、フルギドの劣化を調べた。その結果、HA,HPとも劣化の程度を75%程度減少させ、HAPでは85%の劣化を押さえることができた。
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